猿田つまり,十分な降圧効果に加えてRA系抑制の必要性を検証できるということですか。
中尾そうですね。RA系を抑制することで,たとえば,糖・脂質代謝異常の是正に重要なインスリン抵抗性の改善と,膵β細胞の保護の両者に有効であることが,基礎実験で明らかにされつつあります。実際,多くの臨床研究でARBを投与することで,糖尿病の新規発症が抑制されることが報告されています。この成績は,糖尿病合併症を進行させないという観点からも重要です。また,糖尿病やIGT等の合併例では,RA系が過剰に活性化しており,そのため,動脈硬化も著しく進行しやすくなります。つまり,耐糖能異常と動脈硬化,この両者の進行を是正するためにも,RA系の抑制が必要だと考えます。
荻原日本人に多い脳卒中の3大危険因子が高血圧症,糖尿病,そして心房細動と言われています。高齢化が進むわが国においては,特に,心房細動を抑制しうる降圧療法が重要となります。心房細動の発症,そして慢性化には,RA系の活性化が深く関与しています。一方,心房細動の新規発症は,ARBの投与により抑制されることが報告されています。
従来,脳卒中の発症抑制という観点においては,降圧のみが重視されてきました。しかし,高齢化や糖尿病の増加等,背景因子が大きく変わりつつある現在,本当にそれだけで良いのか? 疑問が残ります。その疑問に対して,CASE-Jが一つの見解を示してくれるでしょう。
中尾確かに,ここ数年の間にSCOPE,LIFE,ACCESS,MOSES等,ARBによる脳卒中の発症抑制を示すエビデンスが相次いで報告されています。しかも,降圧効果は対照群とほぼ同等であることから,降圧効果と臓器保護作用の相乗効果により得られた結果だと考えます。ARBのエビデンスは,脳に限ったものではありません(図2)。しかし,これらのほとんどが欧米のエビデンスであり,日本のエビデンスが必要なことに変わりありません。
猿田腎症の進展をエンドポイントにした大規模試験はいくつかありますが,それらは糖尿病合併高血圧症と,限定された高血圧症を対象にしたものです。高血圧症全般を対象に,腎イベントを主要評価項目に含んだ試験は,
CASE-Jが初めてであり,海外からの関心も高まっています。なぜなら,最近,慢性腎疾患(CKD)と脳・心血管系イベントとの関係が再び注目されています。一方,CKDの重大な危険因子が糖尿病であり,高血圧であることから,CKDの発症・進展抑制を目的とした糖尿病治療や降圧療法を考えなければならないからです。
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